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Googleが独占禁止法違反で提訴?問題点となっているのは何か

#深堀りニュース

' 杉山 夏子 2020.10.23

10月20日から21日にかけて、多数のメディアやSNSで話題となった「Google提訴」のニュースを踏まえて、その原因などを解説します。

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売上高およそ17兆円、時価総額世界第5位を誇る巨大IT企業・Googleが、現地時間の1020日、アメリカ司法省と11の州に反トラスト法違反で訴えられるという出来事が起こりました。

 この出来事はニュースメディアやSNSで話題となっていますが、なぜGoogleが反トラスト法違反で訴えられてしまったのか、Googleが市場を独占していることの何が悪いのか、いまいちイメージできない・・・という方もいるかと思います。

 そこで今回の深掘りニュースでは、独占禁止法違反と言われたGoogleの行為に焦点を当ててニュースを深掘っていきます。

独占禁止法にあたる「反トラスト法」

今回のニュースを深掘りするにあたって、鍵となるのが「反トラスト法」。
反トラスト法は日本でいう「独占禁止法」に当たるアメリカの法律です。

 アメリカの反トラスト法、そして日本の独占禁止法は、健全で公正な企業間の競争状態を維持する目的で制定されており、これらの法律によって企業は平等な経済活動を行えています。

 企業間競争を阻害するような行為やほかの企業を締め出すような排他的な行為が行われた場合は、その企業に対して罰則が科されることが規定されています。

検索市場でトップシェアを誇るGoogle、何が独占禁止法違反?

今回の提訴では、Googleはその支配力や影響力をもって、市場での競争を阻害しているということが言及されています。

しかし、これだけではなぜ訴えられてしまったのか原因がわかりにくいので、司法省や政府が問題視していることを具体的に見ていきます。

Android端末にGoogleを初期設定するよう強制

Android」とは、Googleが開発したスマホを正常に動かすために必要なOS(オペレーティング・システム)の1種です。韓国のサムスン電子が提供するスマホ「Galaxy」や、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社の「Xperia」で使用されています。

他にも様々な端末でAndroidは使用されていますが、その全てで初期設定の検索エンジンが「Google」になっています。

上記のことについて、司法省は「Googleが無償でAndroidを各社へ提供する代わりに、Googleの機能(検索エンジンやGoogleフォト、その他のサービス)を初期設定にするよう強制している」と言及しています。

この場合の問題点は、「スマホ開発元が他のサービスを検討できなくなっていること」と「競合が市場に参入できなくなっていること」の2点。

本来であれば、スマホ開発元が自ら複数の検索エンジンを比較し、最もいい検索エンジンを搭載したスマホを売り出すことが最も良い状態です。
その方がより便利で使いやすいサービスをユーザに提供できます。

しかし、Googleの強制によって、サービス比較の機会が失われてしまっており、最もいいサービスが選ばれにくくなってしまっています。
また、使用を強制するということは、競合の入る隙を与えないこと=市場から締め出しているという状態でもあります。
司法省は提訴の中でも、これらの状況を問題視し、訴状にも明確に記載しています。

Appleに対しては莫大な金銭を支払って独占

Googleによる市場独占は、Androidに限った話ではありません。
Appleが提供するOSを使用した端末でもGoogleの市場独占が行われていると司法省は述べています。

Apple製品では、Appleで開発されたOSを使用しているため、Googleの機能をデフォルトに設定することはできません。
しかし、GoogleAppleに対して年間120憶ドルを支払うことで、デフォルトの検索エンジンにGoogleを使用するよう契約しています。

他社がGoogle以上の金額を支払えば他社の検索エンジンがデフォルトになるものの、Googleの資金力に勝てる競合がいないため、結果、事実上の独占状態になっています。

Googleの独占状態は検索広告市場そのほかの市場でも

Googleが市場を独占していると指摘されているのは検索市場だけではありません。
検索広告市場でも、Googleの市場独占が見受けられます。

例えば、YouTubeに広告を掲載する場合はGoogleが提供する広告取引のツールを使わなければならない状態です。これは、Googleのツールを強制し、競合ツールやサービスを排除しているといえるでしょう。

□競合を買収で無くしてしまう

Googleは将来競合となりえる企業を次々買収し、事業を拡げて結果的に競合を少なくし、自分達に利益が集まるよう誘導している節があります。
過去にも、ウエアラブル端末メーカーFitbitの買収、モバイル広告の配信事業を行うAdMobの買収が「独占禁止法に抵触するのではないか」と言われてきました。

これと似たようなことは、Googleと同じく巨大IT企業GAFAの1つ、Facebookでもおこなわれており、7月に行われ、Googleも出席した下院司法委員会の公聴会では、Facebookに対しInstagramの買収について厳しい聞き取りが行われています。

もしかしたら今後、GoogleだけでなくFacebook・Amazon・Appleにも独占禁止法での提訴や詳しい調査が行われるかもしれません。

なぜGoogleが市場独占するのが悪いことなのか

ここで1つ疑問なのが、Googleが市場を独占することでどのような問題が生じるのかということ。

「今のままでも使いやすさに問題ないし、Googleは便利だしそこまで重要な問題ではないんじゃない?」と感じている方もいるかもしれません。

しかし今の状態がつづけば、Googleの競合他社だけでなく私たちのような一般消費者にも影響が出てしまう恐れがあります。 

検索サービスが満足に使えない

検索市場においてGoogle一強状態が続いたり市場の独占が起こったりすると、競合がどんどんなくなってしまいます。
競合がなくなるということは、私たちが利用できる検索エンジンサービスの選択肢が少なくなり、不便さを感じていてもGoogleを使い続けるしか無くなります。

また、今Googleに不便さを感じていなくても、将来的にもっとこうしてほしい、ここを直してほしいと感じることが出てくるでしょう。
しかし、一強状態のままですと競争相手がいないので、わざわざ質を高めなくても利益が得られる状態です。

したがって、労力や人件費がかかるアップデートやアルゴリズムの変動が行われなくなってしまい、質の低い検索サービスしか生み出されない・利用できない状態に。
アメリカ国内での検索エンジンに関する技術が伸びない、あるいは衰退するといったことも予想されます。

 広告の手数料が高止まりする

通常、広告を出稿したい広告主はユーザーが多く集まり、かつ手数料が低いツールを活用して広告を出稿したいと考えます。
しかし、Googleによって検索広告市場に競合がいなくなってしまった場合、高い手数料を取られるGoogleしか利用できない状態になります。

その結果、企業は高い広告費を払わなければならなくなり、他のことに資金を使用できなくなることが考えられます。 

Googleの独占状態はアメリカ経済・世界経済に影響する

公正な市場であれば競う相手がいるので、利益を獲得するため、各企業は生き残るため日々新しいサービスを作り出したり、技術革新を行なったりします。

しかし、市場が1社による独占状態となってしまうと、競争相手がいないので技術革新のスピードは遅くなりますし、経済を支えている中小企業などが参入できなくなります。 
その結果、経済やその国の技術力に遅れをとってしまうことになります。

特に今アメリカは、経済的にも政治的にも、ライバルとして中国を意識しています。
そのため、市場の独占が消費者の不利益につながるだけでなく、中国にも技術力で劣ってしまうことを懸念し、提訴という手段をとったのではないかとも考えられます。

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